協会の知名度を上げる「勝手表彰」とは?

アメリカに「WELCOA」という名前の協会があります。

「健康経営」の協会です。

健康経営とは、

「従業員の健康増進に会社が積極的に関わること」

を言います。

健康経営には

「社員が健康になれば会社の雰囲気も良くなるし、業績もあがるだろう。採用にも有利なはずだ」

という期待があり、日本政府も健康経営を広めようとしています(※)。

 

WELCOAというこの協会は

「勝手表彰」

とでも呼ぶべき手法で知名度を上げてきました。

どんな方法なのでしょうか。

 

 ▽

 

その前に「勝手格付」について説明します(「勝手表彰」ではなく「勝手格付」)。

債権を買ったことがある人ならお分かりと思いますが、金融の世界には「債権格付機関」というものが存在しています。

  • 政府が発行する国債
  • 自治体が発行する地方債
  • 企業が発行する社債

など、債権の信用度を格付しています(※※)。

 

こうした格付機関は、通常は「格付してほしい」という依頼主の依頼にもとづき、手数料をもらって格付をします(依頼格付)。

しかし、ときおり頼まれもしないのに独自の判断で格付をすることがあります。

「勝手格付」と言われるものです。

頼まれないのに勝手にやりますので、当然、格付機関側は手数料を受け取りません。

その結果、良い格付になれば、格付をされた側は大喜びです。

無料で格付をしてもらい、結果が良いわけですから。

 

問題は、その反対のケース、すなわち、不満足な格付になった場合です。

頼みもしないのに勝手に格付をされ、その結果が悪かったとなると、格付をされた側は

「余計なことをするな」「その格付はおかしい」

と反発します。

実際、よくモメています。

 

 ▽

 

さて、健康経営の協会である「WELCOA」は、健康経営に取り組んでいる企業を表彰していました。

日本でも経済産業省が東京証券取引所と共同で、健康経営に積極的な企業を 「健康経営銘柄」として公表していますが、それと似ています。

 

面白いのは、「WELCOA」が

「頼まれてもいないのに勝手に表彰していた」

という点です。

つまり「勝手表彰」。「勝手格付」ならぬ「勝手表彰」です。

そして、表彰状やトロフィーを用意し、勝手に表彰先に贈っていました。

贈られた企業からすると、ある日、突然、表彰状やトロフィーが届く。一種のサプライズですね。

 

前述した債権格付機関の勝手格付は、その格付結果によって相手が喜ぶときと嫌がるときがあります。

いっぽう、「WELCOA」の勝手表彰は、表彰するだけですから相手が嫌がることはまずありません。

基本、そのサプライズは喜ばれます。

「WELCOA」のことを知らなくても、「立派な協会から表彰してもらった」と感じるようです。

その結果、表彰された側は多くの場合、嬉々として

  • 「当社はWELCOAに表彰されました!」という「お知らせ」を自社サイトにアップする
  • 「当社はWELCOAに表彰されました!」というプレスリリースを配信する

といった行動を取ります。

それを読んだメディアがWELCOAを取材し、その取材記事が新聞や雑誌に載る。

これが全米のあちこちで繰り返された結果、「WELCOA」という協会はかなりの早さで有名になっていきました。

 

 ▽

 

勝手に企業を表彰して喜んでもらい→それを自慢してもらい→結果的に協会の知名度を上げる。

これが「勝手表彰」というわけです。

 

 

 

(※)経済産業省「健康経営」のページ

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html

 

(※※)債権格付機関

  • ムーディーズ
  • S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)
  • フィッチ

が「債権格付機関」の代表です。